前日中に脱稿してしまはうと思つてゐた

 三月六日 前日中に脱稿してしまはうと思つてゐた筈の小説が、おそらく五分の一もまとまつてはゐなかつた。それも、夥しく不安なものだつた。ひとりの人間が、考へたことを紙に誌して、それを読み返した時に自ら嘘のやうな気がする――それは、どちらかの心が不純なのかしら? この頃の自分は、書き度いことは全く持つ...

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ばったの群《む》れ

「あれですか、ばったの群《む》れが、どこかへ移《うつ》ってゆくのです。」と、花《はな》は答《こた》えました。 どこかに、もっといい土地《とち》があるのであろうと、女《め》ちょうは考《かんが》えていました。 その晩《ばん》の月《つき》は、明《あか》るかったのです。そして、地虫《じむし》は、さながら...

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花《はな》の放《はな》つ高《たか》い香気《こうき》

 このうす紫色《むらさきいろ》の、花《はな》の放《はな》つ高《たか》い香気《こうき》は、なんとなく彼女《かのじょ》の心《こころ》を悲《かな》しませずにいませんでした。「冬《ふゆ》を前《まえ》にして、なんと私《わたし》たちは、悪《わる》い時代《じだい》に生《う》まれてこなければならなかったのだろう。...

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