節句の朝

 前の日に片づけたのだと母が云つた雛の箱が床の間に載せてあつた。自分には女のきようだいがないので、これは祖母と母の昔の雛ばかりなのだが、そんなものが好く残つてゐたものだ。自分は、それに惑かれやうとしない心を無理に結ばうと試みた。 在るお雛様を飾らないと、節句の朝にお雛様は自らツヾラの蓋をあけ、行列...

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父のあしたの法要

 自分は、近いうちに静岡を訪れようと思つてゐることなどを話した。静岡には、老妓のお蝶がゐる。勿論お蝶には手紙も行つてはゐないだらうが、父のあしたの法要には出かけて来るだらう――さう思つたので自分は、さつき散歩に出かけた時お園の楼を訪れて彼女の消息を訊ねたのである。 誰と話をしても面白くなかつた。そ...

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夜が白々とする頃寝に就いた

 吾々は、他合もないことを飽きずに語り合つて、夜が白々とする頃寝に就いた。

 三月七日 自分は、午近くに起きた。ふつと眼が醒めた時には、何時もの東京の部屋かと思つた。居るだけで好いのだ、その他には自分には用はないので、母から少しばかり金を貰つて街に出かけて見た。 好い天気である。 東京の家で...

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