父のあしたの法要

 自分は、近いうちに静岡を訪れようと思つてゐることなどを話した。静岡には、老妓のお蝶がゐる。勿論お蝶には手紙も行つてはゐないだらうが、父のあしたの法要には出かけて来るだらう――さう思つたので自分は、さつき散歩に出かけた時お園の楼を訪れて彼女の消息を訊ねたのである。 誰と話をしても面白くなかつた。そ...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 07:56 pm  

夜が白々とする頃寝に就いた

 吾々は、他合もないことを飽きずに語り合つて、夜が白々とする頃寝に就いた。

 三月七日 自分は、午近くに起きた。ふつと眼が醒めた時には、何時もの東京の部屋かと思つた。居るだけで好いのだ、その他には自分には用はないので、母から少しばかり金を貰つて街に出かけて見た。 好い天気である。 東京の家で...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 07:56 pm  

自働車の運転手を指差した

 改札口を出ると妻は、そこに立つてゐる自働車の運転手を指差した。……大地震で彼等の合宿所が潰れた時、恰度その町に居合せた吾々の家は倒れなかつたので、その大半を×さん達に提供したことがある。此方こそ賑かになつて、あの不安から救はれた。×さんは、それ以来知り合ひの青年運転手である。 彼は、吾々を乗せて...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 07:55 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0108 sec.

http://zip-p.com/